※この記事は、Terra Classic(LUNC)チェーンの開発者であるfragwuerdig氏(@tiilentekija)が2022年12月19日に公開した提案『【Proposal】 Exclude IBC Assets from Taxation』の内容を日本語訳した記事となります。
提案の要点
- 現状はTerra Classic以外の資産にも課税設定
- IBC再有効化してもユーティリティや取引量が増えない
- IBC経由のオフチェーン資産取引には非課税
現在はオフチェーン資産にも課税
IBC(Inter-Blockchain Communication)の再有効化についてCosmosHubに提案した際、私は オフチェーン(off-chain)資産をTerra Classicに送金し、分散型の方法でLUNCを取引できるようにすることを念頭に置いていました。これは、オンチェーン(on-chain)の取引量を増やし、Burnを加速させることができればという考えがあったためです。
CosmosHubへの接続が再開された後、私が最初に行ったことはATOM(Cosmos)をTerra Classicに送金することでした。DEX(分散型取引所)である Classic Astroport の「USTC / ATOM」流動性プールに反映させたかったからです。ですが、トランザクションの手数料入力欄に「IBC ATOM」を入れていなかったことによって、トランザクションが失敗したことに気が付きました。
なぜ「IBC ATOM」を入力していなかったかというと、Vegas氏(@VegasMorph)からの最初の提案では、オフチェーン資産の供給量ではなく「LUNCの供給量を減少させること」が目的とされており、オフチェーン資産であるATOMに対しても課税されることを私が想定していなかったからです。そこで、私はEdward Kim氏(@edk208)に現状の課税内容を確認し、ネットワークが実際にATOM / OSMOなどのIBC資産に課税していることが分かりました。
Terra Classicチェーンにおける課税の技術的背景
ここでいう「課税」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。Terra Classicのすべてのトランザクション(取引)には「SendAmount」という入力項目があります。この項目は「どのトークンをどれだけ送るか」を指定するものです。ネットワークは「SendAmount」フィールドにあるすべてのトークンを評価し、それに対して課税します。
つまり、トランザクションの送信者が、特定のトークンに課税する金額をあらかじめ「手数料フィールド」に追加しておく必要があるということです。ネットワークが課税する金額が手数料フィールドに追加されていない場合、そのトランザクションは拒否されます。
現状、SendAmountフィールドに「LUNCを含むトランザクション」と「IBC資産を含むトランザクション」との間に違いはありません。
課税対象についての変更案
IBC経由でTerra Classicに送金される「オフチェーン資産」に対する課税を行わないことを提案します。理由については、GitHub 内「Pros/Cons」のセクションを参照してください。また、この提案を実行するのに必要なコードの変更はTerra Rebelsのコアリポジトリで公開されています。
オフチェーン資産をオンチェーン取引であるMsgSend(ウォレットから別のウォレットへの転送)などで使用する際に課税すべきではないと思う方は「はい」に投票してください。賛成投票はTerra Classicチェーンがオフチェーン資産からTaxを徴収せず、それらを Burn したりコミュニティプールに送金したりしないことを意味します。なお、この提案はIBCトランザクション(異なるチェーンへの送金)には影響しません。
オフチェーンであるIBC資産に対するオンチェーン課税を維持したい場合は「いいえ」に投票して下さい。ただし、これは現状を維持することを意味します。
IBC資産への課税に対する議論
IBC資産に対する課税を行わないということに反対する方の主な主張は「Terra Classicチェーンの資金調達(コミュニティプールの充填)の機会損失になる」ということでしょう。現在、徴収したTaxは"RewardPolicy”のパラメーター設定によって「50%がコミュニティプールへ送金」されます。そのため、Taxとして徴収されたIBC資産も同様に50%がコミュニティプールへ送金されるのです。
LUNCをBurnさせるというシナリオはとても重要なことです。Vegas氏が最初に提案して以来、Burnは主に「Terra Classicチェーンの復活」「ステーキングの再有効化」「ガバナンスの回復」「外部へのアピール」という大きな力となっています。これは非常に強力で、最大手のCEX(中央集権取引所)であるBINANCEは自社の利益を削ってまでBurnによるサポートをしてくれています。また、DEXであるOsmosisでさえもLUNCのBurnメカニズムを実装する可能性もあるかもしれません。
コミュニティはLUNCの供給量を減少されることを望んでおり、こういったシナリオからBurnに対しての正当化ができるため、LUNCへの課税回避はほぼ不可能にります。
一方、LUNC以外の資産を燃やすというシナリオは、それほど強くはありません。Terra Classicがオンチェーン取引に対して課税し、チェーン資産をBurnすれば、課税回避への強い関心を引き寄せることができるでしょう。ですが、もしIBC資産に対しても課税されるのであれば、ユーザーはOSMOやATOMなどをTerra ClassicのDEXで取引したいと思うでしょうか?
私たちは「オンチェーンのユーティリティと取引量を引き付けたい」という考えがあったからこそコミュニティとしてIBCの再有効化を推し進めました。しかし、IBC資産に課税することで、Terra Classic上のどのDEXも他のチェーン上のDEXと競争することができなくなり、資本が流出することに繋がるのです。
もう一つ考慮すべき点は、RewardPolicyのパラメーターはどのトークンであっても「課税されたすべてのトークンに適用される」ことです。もし仮に課税によって徴収されたLUNCをすべてBurnする提案が可決され、RewardPolicyパラメーターを変更した場合、徴収されたIBC資産であるATOMなどもすべてBurnされることになります。そのため「IBC資産を介して資金を集める」というシナリオは時代遅れの発想と言えるでしょう。
さらに、現在のIBC資産への課税は、「Classic Astroport」などの多くのL2アプリケーションが機能しなくなります。修正できないというわけではありませんが、ほとんどのチームがLUNA 2.0(新LUNA)に移行してしまっており、これらのアプリケーションはもうメンテナンスされていません。そのため、これらのチームにTerra Classicチェーン上にあるアプリケーションの修正を促すのは非常に難しいかもしれません。
この件について議論しましょう。あなたの意見を聞くのを楽しみにしています。
『[Proposal] Exclude IBC Assets from Taxation』の原文はこちら
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