※この記事は、Terra Classicで著名なコミュニティメンバーである4lex_4sh4w氏(@4lex_4sh4w)が2022年12月22日に公開した『When bad news is good news(悪いニュースが良いニュースになるとき)』の内容を日本語訳した記事となります。
この記事の要点
- Terra Rebelsが気にしているのはコミュニティではなく"自分たち"
- 善悪の判断を適切に行うためにリテラシー向上が重要
- コミュニティには「共通ビジョン」と「真の分権化・権限委譲」が必要
- BINANCEのBurnに対して宗教的な固執はやめるべき
- Vegas氏らに関するNeblio問題の真相も...
機能していないTerra Rebels
最近可決した「Rebel StationをTFLインフラから分離させる提案」で約9億LUNC($125,000 〜 $150,000)が必要な開発費として提示されたことはコミュニティにとってある意味"素晴らしい"ものでした(Terra Classicの時価総額は記事執筆時点で約9億ドル)。Terra Rebelsは長い時間をかけて内部崩壊することになりましたが、結論として「今後のLUNCには非常にポジティブな展開」になったと言えるでしょう。
Terra Rebelsの機能不全は「8月中旬のTerra Rebels内部での争い」「8月以降にTerra Rebelsを抜けた重要人物の継続的な告発」という形で反映されていきました。
私は、Terra Rebelsを脱退した人は基本的にみんな同じ理由で離れていったのではないかと考えています。Vegas氏 やVegas氏の擁護派の存在、Terra Rebelsの政治的・支配的な姿勢、Discord管理者である ClanMudhorn氏 の存在です。冒頭に述べた「9億LUNC」の主な受給者はこのメンバーで、偶然ではありません。
この12人を中核としたグループは、Terra Rebelsの信頼性、残された開発メンバー、実行力をそれぞれ$11,000程度の利益のために売り払ったのですから、彼らがこれまで気にしていたのはコミュニティではなく、"自分たちだけ”だったということが分かります。
Terra Classic「Rebel StationのTFLインフラ分離提案」が可決
Terra Classicチェーンのサポート・開発を行っているTerra Rebelsが提出していた提案11030が賛成多数によって可決されました。この記事では、提案のポイントと可決されたことによってどう変わっていくのかなどについてわかりやすく解説しています。
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Terra Rebels唯一の功績
Terra Rebelsの唯一の功績は、8月26日に実施された オンチェーン(on-chain)での「1.2% Tax Burn」です。これによってBINANCEやMEXCのような中央集権型取引所でオフチェーン取引が増加して少額のBurnが行われましたが、LUNC Burnのメインとなるオンチェーン取引が大幅に減少することになりました。この時、Vegas氏らは紹介料のためにCEX(中央集権取引所)の紹介リンク延々と拡散・宣伝していました。そして、4週間後に「1.2% Tax Burn」は廃止されたのです。
「1.2% Tax Burn」の廃止後、Terra Rebelsは8月26日以降のLUNCの主要な技術的マイルストーンである、"dragonberry(Cosmosのパッチ)"のセキュリティ修正とIBCの再有効化(Gadikian氏、Edward Kim氏、Fragwuerdig氏、Zaradar氏)を後回しにしました。
Terra Rebelsは、これまでに提案されたスケーラブルなLUNCのBurnメカニズム(USTN提案)と、Terra RebelsをTerra Classicチェーンの門番にすることなくLUNC技術貢献者に権限を委譲する唯一の実行可能な試み(multisig提案)に猛烈に反対していました。
このようなことから「Terra Rebelsに希望が持ていない」と言えるでしょう。Terra Rebelsにはもはや L1 開発者がいないので、チェーンは早急にTerra Rebelsを新しい正規のレポに置き換えるべきです。Gadikian氏 は斬新なgithubのレポ管理システムを提案し、とてもいい印象を与えています。
変えるべきは「教育」
2022年の夏から秋にかけて見られたLUNC価格の高騰は、Burnのストーリーを拡散するマーケターたちによって推進されました。この無秩序なマーケティング手法は想像以上に成功しましたが、その過大評価された「1 + 1 = 3」の単純さが非常にリテラシーの低い新規ユーザーを大量に呼び込んだのです。このユーザーたちの多くは、明らかに仮想通貨を始めたばかりで以下のようなことを理解していませんでした。
- オンチェーンでの取引とCEXでの取引との違い
- 「1+1=3」の解決策(1.2% Tax Burn)がいかに失敗を約束されたものであるかということ
- 私たちをサポートしてくれるCEXが仮に欠陥があるオフチェーンBurnを実施したとしても、破壊されたチェーンのユーティリティに比べればはるかに軽微なものであること
このようなユーザーとともに多くのYouTubeやインフルエンサーが生まれました。彼らは「ユーザーが聞きたいことを少しの誤差もなく伝えること」を意識して活動しています。
仮想通貨とDeFiは専門家にとっても非常に複雑な分野です。Terra Rebelsの初期は、砂漠の真ん中に墜落した飛行機を修理しようと集まった1〜2千人の中の1人になったような感じでした。その後、世界中から25万人の人(コミュニティ)が現れ、中には非常に賢い人もいましたが、ほとんどは本当に悪いアイディアであった「1.2% Tax Burn」が何とか問題を解決しようとしていると確信していました。
ここでTerra Rebelsの仮想通貨に詳しい技術者の間で『1.2%のTaxが恐ろしい考えであることを誰がどのようにして教えるのか?』という緊急の問題が浮上しました。しかし、開発者にありがちなことですが、彼らは特定の要求に対してできる限り早く対処するために、明らかに教育を必要としているコミュニティと関わることを避けていました。
この判断が「将来の失望・内紛・失敗」の種をまいたのだと私は考えています。このシナリオに従った結果、Vegas氏を筆頭とするインフルエンサーにさらに譲歩し、技術的に実現可能なアイデアよりも興味を引きやすい安易なアイデアを実行することになったのです。事実よりも利己的な政治的シナリオを優先するインフルエンサーは「コミュニティにとって長期的な脅威」であり、あらゆる機会で注意喚起されるべきでしょう。
物事について正直な意見の相違が生じる余地はたくさんあり、善意の人々が、強い信念と不正確さの両方の見解を持っていることもたくさんあります。しかし、コミュニティで大きな支持を得ている人々が利己的な物語を優先して技術的な現実を繰り返し無視することは、コミュニティが現在必要としている「共通のビジョンと機能的な分散化」に近づく助けになりません。
これは仮想通貨業界によくある問題で、開発者はは知識がない人たちのために教育を行う時間も忍耐力もありません。短期的には、コア開発者を崇めるようになり、コミュニティはますます彼らに依存するようになります。開発者は、それが自分のエゴを満たすとともに、コミュニティに何かを投票させるのがより簡素化されるのでこの構図が好きなのです。
ですが、長い目で見れば、それは災いをもたらすことになります。ここでインフルエンサーが介入する必要があるのですが、ネット上の虚偽・誇大広告の形態の1つである"クリックベイト"の経済学は、毎回技術的な現実より勝っているように感じます。
健全なコミュニケーションレベルを望むLUNCの開発者や貢献者は、今後このテーマについてもっと積極的になる必要があります。
LUNCコミュニティに必要なもの
LUNCは夏から秋にかけて新規ユーザーを大量に呼び込みましたが、多様性と分散化に対する大きな欠点が明らかになりました。LUNCの ステーキング と ガバナンス を再有効化すること以外には誰も合意することができなかったのです。コミュニティが協力し合うには「共通の目標・ビジョン」「機能的な分権化と権限の委譲」のようなものが必要です。
共通の目標・ビジョン
共通の目標・ビジョンとは「どこに向かっているのか」「何が違うのか」「なぜそのブロックチェーンに関わる全員がより豊かにより幸せになれるのか」などについての明確な考えです。Terra Rebelsの最初の頃、その共通の目標は「ガバナンスを回復し、UST をより良い形で修正・復活させる」というシンプルな形だったように思います。
なお、これらの具体的な解決策は現状見つかっていません。
機能的な分権化と権限の委譲
少額の支出の決定を毎回14日間の投票プロセスで行うのは、コミュニティの必要とする技術的貢献者にとって"クソのような悪夢"です。さらに「誰もが専門家である」という現象が蔓延しているため、提案者は、1件の提案に対して10件にものぼる本当に狂った批判を受けることになり、さらに事態が悪化しています。分散化を進める際には"無政府共産主義 (*1)"に陥ることがありますが、今の私たちはそれをはるかに超えています。
解決策としては、コミュニティプールを管理するために、過去に多くの議論をしたことがある技術専門家(互いに誠実でいられることを証明している)からなる、ある種の マルチシグ に基づいた組織を作ることです。これは、彼らにコミュニティ公開の高い基準を課すことになり、管理にかなりの時間を費やすことになるため管理コストが高くなります。支出のタイミングは、仕事が契約されたときではなく、他のマルチシグ署名者によって判断された「完了時」に契約金の50%以上を支払います。
これらの問題が解決されない限り、LUNCは足の引っ張り合いが続くことになり、着実に減少するコミュニティプールを巡って争うネズミの群れと化すでしょう。
BINANCE Burnへの固執はやめるべき
現在、BINANACEはLUNCのオフチェーンBurnを継続しています。
しかし、私は、BINANCEが現在のオフチェーンBurnの条件に関する大幅な変更が行われない限り、Burnのサポートを終了するのは時間の問題であると主張しています。これは、Terra RebelsやVegas氏が終わりへ近づいているからではありません(関係性はゼロではないが、重要なポイントではない)。
Burnを終了させる最も重要なポイントは、オフチェーンBurnが「BINANCEのシェア獲得に貢献しなかった」ことです。
ですが、これはおそらく最良のことでもあります。
BINANCEが行った月$3,000,000のLUNCをBurnしてきた唯一の理由は「他のCEXからLUNC取引の市場シェアを獲得」することでした。このシェアは発表当時、70%以上ありましたが、LiveCoinWatch によれば、その後の割合が崩壊しています。
私の推測では、BINANCEはそれ以来、6兆9000億LUNCのうち、200億LUNCほどをBurnしたのではないでしょうか。それが何も影響しないわけではありませんが、Terra Classicチェーンの将来にはほぼ無関係と言えます。
賢い仮想通貨の投資家は基本的に「アクティブユーザー数」「分散化」「DApp 開発」の3つの要素を気にしています。
すべてのブロックチェーンは、互いに会話するコンピュータのネットワークです。残念ながらDApp開発が極めて未熟なため、世界には何万もの スマートコントラクト L1ブロックチェーンが存在しますが、イーサリアム(Ethereum)以外では基本的に互い会話ができません。ですので、まずは「迅速な開発を行うための技術者を確保することが優先事項」です。
DApp開発者にとって必要なのは「アプリに予測不能な混乱をもたらすことがないくらい低くて安定した税率」です。なぜなら、本当の意味での分散化がある程度あるからこそ私たちはTerra Classicにいるのであって、偽の分散化でいいのであればブロックチェーンのことは忘れてAWS(*2)を使った方が良いからです。
ではユーザーはどうでしょうか?ユーザーを惹きつけるものは低い税率とオンチェーンでのユーティリティ、つまりはDAppsです。すべてのL1の進化は、ユーザー・アプリ開発者・分散化にとって中立か総合的にプラスになるものであるべきです。
時価総額$8億 〜 $15億のLUNCに対する$1,000,000 / 月のBurn(最大で時価総額の1% / 年)は、上記の基準でシェアを獲得することに比べれば価値はありません。
もしバイナンスが今後もBurnを継続するため、新たに大きな譲歩を要求し始めたら、LUNCは「これまでのサポートに感謝します」と言って立ち去るべきです。
空虚な物語のためにBINANCEに大きな譲歩をすることはユーティリティの成長にとって逆効果となり、意図しない結果でDApp開発者に負担をかけます。そして、後々より悪いアイデアを生み出します。そのことによって怪しく見え、Terra Classicチェーンへのマイナスイメージを付けることになります。
外部の潜在投資家たちは、このようなBurnの物語は「長期的に無意味である」ということを知っているのです。
Vegas氏らに関するNeblio問題の真相
LUNCコミュニティに新しく参入した人たちの教育のためにここに文章として残しておきます。ですが、今後重要だからというわけではないということは念頭に置いておいて下さい。
「1.2% Tax Burn」の失敗後、Vegas氏はTerra Rebelsを強引に誘導し、企業向けに分散アプリケーションを提供している「Neblio」のクソコインを売り込みました。その際Vegas氏は、「BINANCEのCZ氏がNeblioに投資・支援している」という事実無根の情報を拡散し、彼自身のフォロワーにも購入を促していました。
BINANCEは、不満を持つようになったVegas氏の元信者からこの一連の内容を知らされ、当時のTerra Rebelsリーダー格であった何人かにメールを送りました(おそらくEdward Kim氏、ClanMudhorn氏、Vegas氏、Raider氏)。その内容は、Terra RebelsとVegas氏に対し「嘘を拡散するな・BINANCEやCZ氏の名前を出すな・法的措置やメディア対策(停止勧告)を検討している」というものでした。
このことによってVegas氏とRaider氏がゴースト化(姿をくます)していましたが、その裏では実直でストイックなEdward Kim氏がTerra Rebelsのセキュリティで保護されたチャンネルで1人で混乱を解決しようと活動していました。
BINANCEのTerra Rebelsへのメールが「Vegas氏の詐欺マーケティング戦略を明確に指摘した」という事実は、Vegas氏が責任を取るには十分ではありませんでした。理由としては、おそらくVegas氏は内部的にはNeblio提案に反対票を投じましたが、Terra Rebelsの腐敗した「管理者過半数」はそれを支持しており、実際に数ヶ月前からVegas氏とClanMudhorn氏のグループ間で共謀があったことが示唆されています。
Edward Kim氏はこの問題が発生した後、すぐにTerra Rebelsを去りました。
2週間前からTerra Rebelsの偽情報についていけなくなりました。Terra RebelsはIBCの修正に関与していると宣伝しましたが、TFLのウォレットアップデートと重なったため、IBC修正はストップしRebel Stationについての提案を提出しました。Raider氏は再びゴースト化し「Edward Kim氏と外部の組織(Notional Labsと TFL)」のせいにして、Zaradar氏が大きく関与していたにもかかわらず、一切の関与を否定しました。
Terra Rebelsは、コミュニティに対して「25人のコア開発者を含む40人のフルタイムメンバー」がLUNCを支えていると伝えましたが、Terra Rebels GitHubの4人の管理者(最上級の権限を持つ開発者)のうち、実際にTerra RebelsメンバーはZaradar氏1人だけ(2022年12月20日に脱退)でした。他のメンバーはGadikian氏、Edward Kim氏、そしてEdward Kim氏の同僚であるMarco氏です。
『When bad news is good news』の原文はこちら