※この記事は、著名なTerra Classic開発者であるEdward Kim氏(@edk208)が2022年12月24日に公開した提案『Joint L1 Task Force(合同L1タスクフォース)』の内容を日本語訳した記事となります。
提案の要点
- Edward Kim氏、Zaradar氏、fragwuerdig氏で「Joint L1 Task Force」を結成
- 開発者3名を雇用するための予算が必要
- 2023年第1四半期(1 〜 3月)の開発スケジュール
開発チーム「Joint L1 Task Force」の結成
Terra Classic(LUNC)のブロックチェーンにはメンテナンスアップデートが必要です。そこで、LUNCコミュニティの皆様に「L1 の安定に必要なアップグレードを完了させるために、経験豊富なブロックチェーン開発者数名と契約すること」を提案します。
提案の概要
Terraが最盛期だった頃、TFL(Terraform Labs)には6 〜 8名の上級L1ブロックチェーン開発者チームがいました。この程度のサポートメンバーがいれば、開発者はセキュリティとメンテナンスに加えて、将来性のある新たな開発に集中することができます。
現在の状況や予算面で厳しい制約があることなども考慮して「今後4〜6ヶ月で完了する必須のメンテナンスアップグレードに集中するために、フルタイムで働くL1ブロックチェーン開発者3名を雇用するための予算提供」を提案します。安定のためのアップグレードが成功したら、開発チームはより革新的で長期的な開発に移行していく予定です。
プロジェクトメンバー
プロジェクトのチームメンバーは、過去7ヶ月間にL1に多大な貢献をしたコミュニティメンバーのTobias Andersen氏(@ZaradarBH)、fragwuerdig氏(@tiilentekija)、私(Edward Kim)の3名で、Jacob Gadikian氏のグループである「Notional Labs」からサポートを受けながら開発を進めていきます。
このチームメンバーによって提供されたこれまでの具体的なL1開発(一部または全部)には以下のようなものが含まれます。
また「パラメータチェーンの更新」「レイヤー・CEXの調整」「革新的なチェーンの提案」「コミュニティの教育資料に関するサポート」もこれらのメンバーによって提供されてきました。
2023年のTerra Classic開発スケジュール:第1四半期
Notional Labの 提案 と密接に連携し、今後のタスクと実行期間についてそれぞれ説明していきます。
2023年1月:第1四半期
- L1チームのプロセスおよびプロダクトの未処理タスクを明確にする
- このL1チームのために、信頼できる第三者を集めた「コミュニティ監視委員会」を設立(PFC氏、DJTrev氏、StrathCole氏)
- ソフトウェアアップグレードガバナンスの提案を活用するためのアップグレードハンドラー導入の可能性を検討(処理を行いやすくなる)
- 現在の「バージョンマップ」の状態を評価し、我々のシステムの現状を反映させるためにどのようにパッチを当てることができるかを決定
- 「バージョンマップ」を修正できない場合の「フォールバック戦略」を維持するために、「genesis import」の問題への取り組みを継続
- Ante Handlerを調整し、Tax Burnの50%をコミュニティプールに、残りの50%をBurnウォレットに送る
- 認証モジュールの "estimate-fee"クライアントロジック(LCD)をテスト / アップグレードし、"Tax Burn"の税率が正しく計算されるようにする
- IBC denom whitelistのテストとアップグレード
- 正規のgithubレポがない場合のガバナンスを提案
- testnetのテスト、プッシュ、バージョン1.0.5へのアップグレード
- メインネットのテスト、プッシュ、バージョン1.0.5へのアップグレード
2023年2月:第1四半期
- バックエンドの速度向上のためにPebbleDB / BadgerDbを調査し、goleveldb / rocksdbのサポートを打ち切る
- iavl 0.19.4で iavl fast nodeへの移行
- ソフトウェアアップグレードガバナンスの提案を利用するためにアップグレードハンドラーの実装
- 将来のチェーンアップグレードに"cosmovisor"を使用する可能性の評価を行う
- オラクルをサポートするTFLパッチを使用して、Cosmos SDK v0.45.11にアップグレードされたチェーンをテスト
- オラクルをサポートするTFLパッチを使用して、Tendermint v0.34.21にアップグレードされたチェーンをテスト
- Cosmos 45.11およびTendermint v0.34.21との互換性を確保するために、Classicチェーンのインフラ(*1)、および L2 ウォレット プロバイダー/パートナーと緊密に連携
- Mev-Tendermintのためのガバナンスを提案
- バージョン2.0.4でtestnetをテスト、プッシュ、およびアップグレード
- バージョン2.0.4でメインネットをテスト、プッシュ、およびアップグレード
*1 これらの段階でインフラストラクチャおよびL2ウォレットプロバイダー / パートナーが支援するために、追加の予算が要求される場合があります。
2023年3月:第1四半期
- Tendermint v0.37正規版へのアップデートを検討
- Tendermint v0.37採用後、オラクルのトランザクション(tx)の優先順位と互換性を他のtxと比較して確認
- オラクルをsha256で保護し、すべてのバリデーターに配備
- TFLが提供する「Interchain Station」のフォークを行い、ウォレットレベルでbech32問題の解決策を開発し、TFLに複数の解決策を提示(*2)
- Cosmwasm v1.0.0へのアップグレードの影響分析、0.16.6からL2 wasmコントラクトを移行する際の影響評価
- 現在のWASM仮想マシンをCosmwasm v1.0.0に適合するように拡張
- Sercret Network のAssaf氏と連絡を取り、デュアルVMのセットアップを理解
- 第1四半期の成果まとめ、チーム活動に対するコミュニティの評価とチーム活動への資金提供継続のためのガバナンス投票
*2 Interchain Stationの互換性はbech32問題の解決を条件とします。
Terra ClassicのL1開発を行うための予算
活動費
これらの活動に対する予算の要求は以下の通りです。(USDレート換算)
- フルタイム開発者(Tobias Andersen氏) に対して月額$12,500
- フルタイム開発者(Notional Labs)に対して月額$12,500
- パートタイム開発者(fragwuerdig氏)に対して月額$6,250
- パートタイム開発者(Edward Kim)に対して月額$6,250
これは、年間$150,000のフルタイム開発者3人分の予算に相当します。
追加予算
追加で要求される予算は以下の通りです。(USDレート換算)
- パートタイムのアシスタントに対する報酬:月額$2,500
- トレーニングのための予算:月額$2,500(x 2名)
- 上級開発者のコンピューティングのための裁量的予算:月額750ドル(x 3名)
【追加予算の正当性】
■ パートタイムのアシスタント(1名)
すべてのミーティングへの出席、ミーティングの議事録、コミュニティとの連絡、コミュニティと最新情報を共有するためのTwitterスペース運営、予算の会計処理、一般の要望への対応、チームの編成、タスクの監督、L1アップグレード手順の文書化、開発者向けの文書の更新などが必要となります。
■ トレーニングのための予算(ジュニア開発者2名)
L1開発の支援を約束するジュニア開発者をスキルアップするための予算となります。望ましい目標は、彼らに「cosmos-sdk」「tendermint」の内部動作を学習させ、Terra Classicの将来に貢献できるようにすることです。すでに参加の意思を示している2人の開発者は、Frank氏とZorro氏で、このジュニア開発者はすべての会議に出席し、特定の成果物、ドキュメント、および調査を担当します。最終的には、才能・技術を伸ばしながらL1開発者として成長させることによって堅固な基盤を提供し、一部の開発者への集中的な依存を取り除くことが目的です。
■ 上級開発者のコンピューティングのための予算(上級開発者3名)
パフォーマンスの高いブロックチェーンの開発者として、自己負担しているコンピューティングコストを予算化する必要があります。現在、私が実際に支払っている個人的な費用に基づく計算で、1 か月あたりの総支出が ~$800となります。その内訳は以下の通りです。
$480
私が使用するノードは「Linodeインスタンス」で、32GBモデルは月額$240(x 2台)です。1つはTestnet用、もう1つはColumbus-5のフルノード用です。
$120
テストノード2つ分(レイグラウンドノード・IBC テスト用のOsmosisノード)でそれぞれ$60です。
$100
Columbus-5 の1 TBのメモリの$100です。(NVMEクラウドメモリは1 GBあたり0.10c)
〜$100
ハイメモリモデル150 GBは$480かかりますが、私はこの一部を稼働させているため、$100未満で計上しています。これはColumbus-5の状態をエクスポートするために必要です。
要求している予算合計
第1四半期に要求する予算の合計は$141,750(9億9,100万LUNC)で、各メンバーにはLUNCで支給されます。
L1開発の予算は四半期ごとに要求され、実装・実行した成果物とコミュニティガバナンスを条件とします。要求する予算まとめは以下の通りです。
- $37,500:Tobias Andersen氏の報酬($12,500 x 3ヶ月)
- $37,500:Notional Labsの報酬($12,500 x 3ヶ月)
- $18,750:fragwuerdig氏の報酬($6,250 x 3ヶ月)
- $18,750:Edward Kim($6,250 x 3ヶ月)
- $7,500:アシスタントの報酬($2,500 x 3ヶ月)
- $15,000:ジュニア開発者のトレーニング費用($2,500 x 2名 x 3ヶ月)
- $6,750:上級開発者のコンピューティング費用($750 x 3名 x 3ヶ月)
予算の支給条件
9億9,100万LUNC(0.000143での計算)が各メンバーに支給されますが、支払いは、適切なマイルストーンが達成され、監視委員会の承認、TGF(Terra Grants Foundation)の マルチシグ の署名者の承認を経て毎月末に行われます。
TGFウォレットのマルチシグウォレットは「Edward Kim・Marco氏・Jagmot氏(Allnodes)」によって管理されています。これは私個人による提案ですが、報告やコミュニティへの参加、説明責任についてTGFに支援を求めています。
また、L1関連の提案や資金提供の要請がTGFに寄せられた場合、利益相反を排除するために、Edward Kimはその提案の評価や監視に関与しません。
『Joint L1 Task Force』の原文はこちら